【会社所有車のによる事故】
(3) 泥棒運転中の事故
第三者による泥棒運転の場合はその運転者と会社との関係、自動車の管理状況(ドアロックがしてあったか否か、キーがつけっぱなしであったか否か、駐車場内に第三者が立ち入ることのできる構造であったかなど)
自動車の返還予定の有無、自動車が持出されてから事故がおきるまでの時間、走行距離等を考慮して会社に使用者責任、運行供用者責任を負わせられるかどうか決定されます。
現在のところ、泥棒運転で会社に管理上の過失が全くない場合には会社に責任を負わせていませんが、いずれは報償責任主義、危険責任主義の考え方がより支配的になり、このようなケースについても会社に責任を負わせるようになる可能性もあります。

【判例】
【会社に責任を認めた例】
会社を退職した者が無断で会社の車を持ち出し、起こした事故につき会社が自動車の取戻しの努力をしなかったこと、車およびキイの保管状況、更に加害者も遠からず自動車を会社に返還する意図であったことなどから、会社に運行供用者責任および使用者責任を認めた例
(東京地裁昭47.3.27判決)
甲会社の元被用者乙は、甲会社を退職した日の翌日、エンジンキーを差しこんだまま、しかもドァにキイをかけずに甲会社の車が駐車してあったので、それを無断で持ち出し、私用運転中事故を起こした。
これについて加害車両は、誰にでも持ち出せ、会社が保管に特に注意を払ったものとは認められず、また運転者は短時間に車を返還する予定であった点から、会社に運行供用者責任を認めた例
(最高裁昭49.11.12判決)
従業員がドァをロックせずキーをつけたまま車を放置しておいたところ、通りがかりの者が、運転して事故を起こした場合について、従業員の放置行為と事故との間に因果関係があり、かつ、保管上の過失があるとして、使用者責任を認めた例
(京都地裁昭56.9.7判決)(交民集14巻5号1051頁)
【会社に責任を認めなかった例】
タクシー会社構内にキイをつけたまま止めてあったタクシーが窃取された場合につき、タクシー会社に運行供用者責任を認めなかった例
(東京地裁昭48.8.16判決)
タクシーの泥棒運転による事故につき、自動車を駐車させた駐車場が客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況にあると認めうる時、
たとえ当該自動車にキイを差し込んだままの状態で駐車させても、このことのために通常当該自動車が第三者により窃取され、且っこの第三者により、事故がひき起こされるとは限らないから、相当因果関係がないとしてタクシー会社に使用者責任も不法行為責任も認めなかった例
(最高裁昭48.12.20判決)
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