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【下請負人による事故】
2)元請会社・親会社の貴任を認めなかった例
下請人の車の起こした事故について元請人が責任を負わないのは、前記(1)の@の状況がない時、
すなわち事故が会社の業務中に発生したものでなく、会社の指揮監督が及ばない場合です。特にその下請が専属的でないときは元請人の責任が認められる例はあまりないといえましょう。

【判例】
貨物運送の請負会社乙が自己所有車で起こした事故につき、注文主である甲会社名が車体に表示されていても、専属的、優先的に請負っていたわけではないこと、甲会社の指揮監督等の存在がないとして、甲会社に運行供用者責任及ぴ使用者責任を認めなかった例 (和歌山地裁昭49.10.15判決)
元請会社より請負った土砂運搬に従事中の下請会社の運転者が起こした事故につき、下請人にとって元請人は、最大の大口注文者であったが請負うか否かは個別に具体的な条件を検討して決定していた。
請負業務の履行について格別の指示も受けていなかったこと、車両の維持、管理費も下請人が自ら負担していたこと等を根拠に、専属的ないしは従属的請負関係にはなく、元請人に運行支配が帰属していないとして、元請会社に運行供用者責任を認めなかった例 (大阪地裁昭50.1.30判決)
請負作業そのものではなく、作業現場への作業員の輸送、現場間の連絡等に使用されていた車両が、作業詰所に帰る途中に起こした事故、 加害車は、構内のみにおいて使用する登録番号のない車であるが、その運転責任者の指定を直接親会社がするとは考えられず、親会社が、加害者の運行を一般的に支配していたものということができないとして、運行供用者責任を認めなかった例 (岡山地裁昭53.2.20判決)(交民集11巻1号232頁)
青果物卸売業である甲会社からの運送依頼の斡旋に基づいて運送をしていた乙使用の加害車が起こした事故について、
甲は、出荷者と乙の間に入って到着時間、数量などを連絡していたが、直接運行利益、運行支配のおよぶものではないとし、運行供用者責任を認めなかった例 (新潟地裁柏崎支部昭53.10.4判決)
新聞配送式会が、自社の貨物自動車10台のほかに傭車契約により11名に新聞を配送させていたところ、この契約配送者が、自已所有車で配送終了後起こした事故につき、
契約配送者には何らの便宜も供与されていなかったこと、契約期間が1年ごとであったことなどから、専属的関係はなかったとして新聞発送会杜に、運行供用者責任を認めなかった例 (広島高裁昭57.9.21判決)(交民集15巻5号1138頁)
建築工事の下請会社が、5日間のリースで借りた高所作業用の特殊な車両を工事現場において孫請会社の一社に専属的に使用させていた場合、
他の下請会社の従業員が無断で現場事務所の出入口の錠をその隠し場所から取り出して解錠し、車のキーを持ち出して始動させ、私用のために運転中事故を起こした場合について、
下請会社の加害車に対する支配は、加害車が乗り出されたときに失われたとして、元請会杜に運行供用者責任を認めなかった例 (福岡地裁小倉支部昭58.6.27判決)(交民集16巻3号858
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